元エホバの証人2世の生まれて最初の記憶、最初で最後のバースデーケーキ / 元エホバの証人2世のいる場所

元エホバの証人2世、最初で最後のバースデーケーキ

私が生まれたのは1980年代初頭。両親の長男として、普通の家庭で育てられるはずだった。しかし、両親がエホバの証人という新興宗教に献身（完全に入信してしまうようなもの）してしまう不運に見舞われ、過酷な前半生を送ることになった。

私は、生まれながらのエホバの証人の2世信者だったと最近まで思い込んでいた。2世信者というのは、親がエホバの証人であるために、当然のようにエホバの証人にされる子どものこと。

しかし、最近発見した昔のアルバムには、ケーキにロウソクを立て、私の1才の誕生日を祝っている家族の姿が写っていた。

エホバの証人は、誕生日を祝うことを禁止しているので、私が1才のときには両親はまだエホバの証人では無かったということになる。この前後の、私が物心つく前に、エホバの証人の不幸の伝道者が我が家を訪れ、両親を入信させた。

この頃、住んでいたのは中部地方の郊外で、都会の田舎という雰囲気の場所。市街地までは車ですぐだが、自宅の周辺には大きな川や田畑があり、公園もある。コンビニやスーパーマーケットも家からすぐの場所にあるという、住みやすい郊外都市。

最初の不運は、母がエホバの証人の王国会館に通い始めたこと。どこのエホバの証人の家庭も、たいてい母親からエホバの証人の魔手に落ちる。子どもは母親に強制され、そして父親は仕方なくエホバの証人に関わり始めることになる。

私も母親によって、エホバの証人の王国会館に連行されていた。エホバの証人の王国会館では、集会と呼ばれる宗教講話や討議が行われる。

しかし、幼い私は王国会館で開かれている集会の間、おとなしく座っていることができなかった。とある薄曇りの日曜日の午後、母は集会中の私の騒がしい態度に怒りを爆発させる。

エホバの証人の子どもたちは、決定的に洗脳されているので2時間もの集会の間、おとなしく座っていることができる。そんなロボットみたいなエホバの証人2世と元気な自分の子どもを比べちゃダメ。

エホバの証人の子どもたちは、懲らしめと呼ばれる体罰を受けているので、異常にお利口。子どもらしさの微塵もない人間としての失敗作。私からすると欠陥人間に見える。

感情的に怒る母親をなだめるために私が言った運命の一言が

「お父さんも一緒に来てくれたら、僕はおとなしくしていられるかも」

この一連のやり取りが、私が生まれてからの最初の記憶。これをきっかけに父も王国会館へ通い始める。宗教施設に行ったばかりに、精神的に不安定になり子どもに怒鳴り散らすという始まり。これがエホバの証人一家の行く末を暗示していた。

その後、両親2人ともに教団に献身。そして両親は狂信的なエホバの証人になっていく。父は会衆の長老という責任者になり、母親は正規開拓奉仕者となった。

正規開拓奉仕者とは、年に1000時間もエホバの証人の布教活動に時間を費やす人のこと。小学校に入る前の私は、母親の布教活動に毎日毎日連れ回された。雨の日も風の日も、極寒酷暑の中を、家から家へと連れ回された。

はっきり言って、布教活動に連れ回されるのは、嫌で嫌で仕方が無かった。歩くのは疲れるし、途方もなくヒマ。たまに見知らぬ家の呼び鈴を鳴らさせられることもあった。これは今でも悪夢として見ることがある。

エホバの証人の王国会館に通うのも苦痛だった。つまらないし、外で遊べないから。

しかし、これを言ってしまうと、エホバの証人2世の子どもには懲らしめと呼ばれる体罰が待っている。子どもの私は、おとなしくエホバの証人活動に従事するしか、生きていく術がなかった。