エホバの証人に自殺者が多い理由
前回は私の父親の自殺未遂から、エホバの証人に自殺者が多い理由を考察した。父親が夜の海に身投げをしようとした前回の話はこちら
今回はこの続き。シリーズ最後4回目。お互いにエホバの証人をやめた後で、父親から聞いた話。
エホバの証人家族の崩壊と父親の出奔
父親、母親、私が一人息子という、私の家族はエホバの証人家族として、ものみの塔協会の洗脳下にあった。私が生まれた頃から、エホバの証人をやめると14歳の私が宣言したときまで、それが続く。
私が成人し、家を出て一人暮らしを始めた頃、父親、母親の順番でエホバの証人をやめる。この過程で両親は離婚し、一家崩壊となる。父親は離婚と同時に行き先知れずとなり、数年ぶりに再開したときに聞いた話である。
父親は、離婚した後、一人放浪するように日本中を彷徨っていたという。その途中で持ち金が無くなるたびに、死のうと考えた。しかし、その度に最後の有り金で買った馬券が当たったり、これで負けたら死ぬしかないというパチンコで大勝したりした。
まるで何かの力に生きろと言われているかのよう。ギャンブルの神様か?エホバの証人はこんな話をすると、エホバが救ってくれたとか言い出すのだが、背教者に一方的に善行を施す神はいないよね。とにもかくにも自殺する直前で何度も命拾いしたのだという。
世の中には、道半ばで死んでいく者が無数にいる。一方、自殺願望を抱えたまま、生き延びたのは何かの意味があるのかもしれない。そんなことは私にとってはどうでも良く、ただ一人の父親が、こうして生き残り、また話が出来て良かったと胸をなで下ろしたのだった。
カルト宗教にハマり貧困し自殺するエホバの証人
父親はなぜ、何度も死のうと思ったのか?
まず第一に経済的な困窮である。金が無くなったら死ぬ。放っておいても死ぬので自死を選ぶと。なぜ経済的に困窮していたのか?それは、エホバの証人として20代~50代の実り多い人生を、ものみの塔協会に捧げてしまったからである。
大学を卒業して就職した世俗の仕事を捨ててしまったこと。私の父親世代であれば終身雇用が確定的だった。そのまま勤めさえすれば喰いっぱぐれることは無かった時代。
それをむざむざエホバの証人活動に全力を尽くすために、時間の融通の効くパートタイムの仕事に転職するという、まさに自殺行為。それにより将来の自殺未遂を引き起こすという結末。笑えない小噺かと。
宗教活動により日常生活に支障をきたすことがあれば、その宗教はカルトである。エホバの証人、ものみの塔協会に対して注意する点があるとすれば、輸血を拒否するとか児童虐待をしているとかがあるのだが、最も危険な点は本来の自分の生活が制限されるカルトである点だ。近寄らないに越したことはない。
エホバの証人が抱く罪悪感
父親が自殺願望を持つに至った第二の理由は、罪の意識である。父親はエホバの証人の中では長老という立場にあり、100人程度の信者を束ねる立場だった。世俗の地位を失う代わりに、ものみの塔協会組織内での”特権”的立場を得たのだった。
ただこの立場に見合うものは何もない。特権とは名ばかり。給与や住宅が与えられる訳でもない。組織内での地位だけ。実の一切伴わない優越感だけである。この長老の立場にある者は、下の一般信者の指導も担う。ものみの塔協会の教義に沿っているか監視し、背くものがあれば排斥処分というエホバの証人的村八分にする制裁を科す。
私の父はそんな立場にいたのである。それゆえに大怪我や大病で輸血が必要な信者がいれば、それを押しとどめる必要があった。エホバの証人は輸血が禁止されているから。自身が輸血を押し留めたせいで命を落とす信者もいたはずだ。
また、進学、就職に際しても世間一般的な見方でなくエホバの証人的価値観を信者たちに押し付けてきた。それでいったい何人もの人々が、人生の成果を無駄にしたことか。時間の自由がきかない仕事をやめるように信者に要求したこともある。そうして何人もの人々を路頭に迷わせ、幾多の家族を崩壊へ導いてきた。
この罪悪感が、父親を自殺未遂へと誘導した。しかし、やってしまったことは仕方のないことだ。取返しのつかないことではあるのだが、父親自身だって被害者である。洗脳状態にあった訳で情状酌量の余地もある。
さらに騙された一般信者にも自己責任はある。自ら望んでカルトに助けをすがったのだ。父親にはそこまで自分を責める必要はないと私は言いたい。
家族を失い自殺に至るエホバの証人
父親が自殺に至ろうと考えた第三の理由、これは愛する家族の崩壊だろう。一人息子の私は、エホバの証人である両親にとっくに愛想を尽かしていた。また懲らしめと称した児童虐待を私に繰り返した事実は決して消えない。そして夫婦関係はエホバの証人をやめる過程で家庭内別居、離婚へと至る。これが自殺未遂の3つめの理由。
私の父親が自殺未遂を起こした理由は以下の3つ。
- エホバの証人活動により経済的に困窮した
- エホバの証人活動による罪悪感
- エホバの証人活動により家族を失った虚しさ
エホバの証人という危険なカルト教団には絶対に関わってはいけない。仕事、金、教育、人生、家族、健全な精神状態、果てには命まで失うことになってしまう。
エホバの証人2世の自殺と自傷行為についてはこちら