緊急時には、エホバの証人の子どもの親権停止は間に合わない
2023/11/20のエホバの証人問題支援弁護団の記者会見。宗教虐待についての調査結果報告書の公開について。
記者会見では、児童に対する輸血拒否の法的体制について説明された。この点、私に現実の認識不足があった。本ブログの過去記事についても訂正を加えた。
エホバの証人の親が、15才未満の子どもに対して輸血拒否をしていて、医療ネグレクトが発生している場合。
この場合、親権停止措置をとって輸血できると考えていたが、非常時には全く間に合わないらしい。交通事故などの超緊急時には、エホバの証人の子どもは、親の輸血拒否で命を落とすことが十分にあり得る。
以下のような流れとなる。15才未満の子どもに限った話。
- 時間がある場合、親権停止の審判
- 緊急の場合、1.の保全処分(家庭裁判所経由なので時間はかかる)
- 児童相談所の所長による緊急措置で輸血できる(最短3~4時間)
- 超緊急の場合、緊急避難で医師の判断で輸血により救命できる
ところが、4.に関しては、緊急避難で輸血できるドクターXくらいの肝が据わった医師は現実的にはいない。
以前、エホバの証人が無断で輸血されて命を救われたことがある。その際、逆に救命してくれた医師を訴えるという恩知らずな訴訟があり、最高裁の判決ではエホバの証人側の勝訴となってしまった。
命より、輸血拒否という意味不明信条を上に置いてしまった、倫理観の欠如した判例。
この愚かな判例があるために、医師は強制輸血について躊躇することもある(本来15才未満の子どもには関係なくとも)。それで、親の説得という無難な方向にムダに時間を使ったり、上席者の判断を仰いだりすることになる。医師も組織人なので、仕方のないところ。
しかし、そうやって時間を費やしていると、超緊急に輸血を必要とする子どもが、手遅れになることもあり得る。
医師判断で緊急避難の輸血をしない場合は、3.の児童相談所所長による緊急措置に戻るのだが、これには3~4時間を要する。
1985年のエホバの証人の川崎事件の場合、被害者児童が搬送されてから亡くなるまで4時間23分。当然、4時間23分すべての時間を使えるわけではないので、生命の瀬戸際で間に合わないというケースが多いだろう。
『説得 エホバの証人と輸血拒否事件』~偶然サバイバルした者の務め
この点、1985年の段階から果たして前進しているのか、子どもの命の瀬戸際を、社会の力で救うことができるのか?本報告書では制度の見直しを提言している。
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