『解毒』、傷だらけで『羽』のないエホバの証人2世

自殺者の多いエホバの証人2世

元エホバの証人2世の書いた『解毒』。この本の作者は、エホバの証人2世たちのことを「戦友」と書く。かつての私の戦友たちはどうしているのだろうか?死んでいなければ、私と同じ40才前後。

死んでいなければというのは、エホバの証人には自殺者が多いから。特にエホバの証人2世には自殺者が多いと、この本の筆者も書いている。

筆者によると原因は2つ。毒親による虐待で精神を病むこと。教理を強制されて育ったために自立心が無く、一般社会でうまくやっていけないため。

エホバの証人に自殺者が多い理由①

傷だらけの元エホバの証人2世

エホバの証人を脱出し、一般社会である程度まともな生活を送っている人の中には、ムチなどの虐待が心の傷になっていないと言う人もいる

一般社会で、ある程度まともな生活を送っている元エホバの証人2世とは、確実に私のこと。紆余曲折したが、現在40才、妻と子供2人。年収はもっと欲しいのだが、子どもの頃に夢見た普通の生活を手にしている。

普通というのは、七夕をしたり、クリスマスをしたり、日曜日に集会に行かずに家族で遊びに行ったり、学校の友達とキャンプに行くのを許されたり、というレベル。近代社会の普通。

いわゆる”まともな生活”を送っている私だが、子どもの頃の傷がないかと言えば、そうでもない。傷だらけでやっていけないレベルではないが、多少の傷はある。

車に乗っていて、エホバの証人の王国会館を見れば悪寒がするし、駅前にエホバの証人が立っていれば、逃げるように立ち去る。いまだに夢の中で、王国会館に行かなければならない少年期に戻っていてゾッとすることもあるし、ものみの塔の布教活動のために、見知らぬ家のブザーをいやいや鳴らす夢を見る。

こう書くと傷だらけのような気もするが、日常生活に問題はない。親から受けた虐待が私に伝染し、子どもや妻に暴力を振るうということもない。

誰でも、多かれ少なかれ傷の一つや二つある。頭の中が完全にハッピーなのは、本当におめでたいヤバい奴だけ。あとは現役エホバの証人か。

いわゆる”まともな生活”を送っている人々は、ことさら傷ついているアピールしないだけ。元エホバの証人だけが深く傷ついているわけではない。とはいえ、元エホバの証人2世の多くが、多かれ少なかれ傷ついている人のグループに入るのは間違いない。

おそらく、傷がないと言っている元エホバの証人は強がっているのか、目を背けていて自分では傷を認知していないのか、もしくはエホバの証人としての経歴やマインドコントロール、つまりはキズそのモノが浅かったかのいずれか。

両親の愛情が子どもに「羽」を与える

「傷がない」というエホバの証人には

ほぼ例外なく「セーフティネット」があり、自立のための「羽」も与えられている

と筆者は書く。「セーフティネット」というのは、非信者である父親だったり、親族であったり。自立のための「羽」はその「セーフティネット」が与えるモノ。

何があっても守って貰える「セーフティネット」があるから、子どもはちょっと冒険してみよう、ジャンプしてみよう、挑戦してみようと、自立心=「羽」を養える。

私には「セーフティネット」は無かった。両親ともにエホバの証人だったから。気のいい親族たちは、私にとって十分に「セーフティネット」足りうる人々だったが、私はそれらの人にも頼らなかった。両親がエホバの証人活動で迷惑をかけまくった親族に頼るのが、嫌だったから。

私は14才でエホバの証人をやめ、両親と決別する決心をしたのだが、この時点で自立のための「羽」があった。それは、おそらく毒親とはいえ、愛情だけは真実だったから。

また、私がエホバの証人でなくても、両親は私を愛してくれる”はず”という思い込みがあった。この思い込みが裏切られようが、当たろうが関係ない。私の側から、エホバの証人である親との縁を切ると決めたので。こっちから縁を切れば、裏切られようがない。

たとえ両親の愛情が、一人息子の私がエホバの証人であるならばという”限定的”愛情であっても、その真実を知りようがない。もはやどうでも良い。そう思っていた時点で、14才の私には「羽」があった。

虐待、マインドコントロール、ものみの塔教理の強制というひどい両親だったが、私にそう思い込ませるだけの愛情を注いでいた。そして、子どもは親の愛情に敏感。子どもの私の勘は外れなかった。

14才でエホバの証人をやめた後、私は家を出て中卒で働くことも覚悟していた。むしろ、私はそれを望んでいた。それくらいにエホバの証人の教理を押し付ける両親から自由になりたかった。

しかし、両親はそれを許さなかった。二人ともエホバの証人をやめたわけではなかったが、私を短大まで卒業させてくれた。このおかけで今の私があり、高等教育を受けさせてくれたことには、非常に感謝している。

エホバの証人をやめた中学生の暴走


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