『解毒』~エホバの証人2世の長い戦い、洗脳解除・脱会後の延長戦

エホバの証人の洗脳が解けた女性の書いた、『解毒』

元エホバの証人2世の女性が書いた『解毒』。洗脳が解ける瞬間が鮮やかに描かれている。現役エホバの証人の人が読むなら、電子書籍がおすすめ。

私は初めて「エホバ」という存在の異様さを痛感した。それは、三十三年間、一度も感じたことの無い、新しい感覚と意識だった。まるで麻酔から覚めた時のように、私には「痛いこと」を「痛い」と感じる機能が存在していた。

この本の著者は、友人信者の死がきっかけで洗脳が解除された。作者は排斥処分というエホバの証人的村八分になっており、死の床にある友人に会えなかった。そのまま友人は亡くなる。

排斥状態にあったため、エホバの証人の友人と今生の別れが出来なかった。不条理な別れを嘆いているときに、この状態を生む神が果たして「愛の神」なのか?と考える。そして、エホバとは「愛のない神」であり、つまり「存在しない」と気付いた。

組織の掟によって、親友の死に際にも会わせて貰えないという壮絶な経験。作者は「底つき体験」と書いているが、これが著者の洗脳解除のカギになった。

そして、同じ苦しみを味わい、先に旅立っていった数多のエホバの証人2世の「戦友」のために、生存者としての自分の責任を果たそうと決意。だが、これで終わりではなかった。

エホバの証人の戦い

本作の著者は、洗脳が解けても組織を完全に抜けられなかった。作中で「認知の歪み」と書かれている本人の問題。家族がエホバの証人であり、教団内の人間関係に依存していることが原因。

この原因を超えるきっかけになったのは、東日本大震災。帰宅困難者で混む通勤電車に乗って、エホバの証人の集会に向かうときに、著者は自分を情けなく感じる。「こんな非常時に、エホバの証人の集会に行く理由がない」と感じたのだ。

親友の死とか、未曾有の大災害などが著者の転換点になっている。この人の洗脳は相当に深かった。激しい外圧で、心が揺さぶられなければ解けなかった。

私の場合は、生まれてから14年間の戦いだった。比較的傷は浅いのかも知れない。私は洗脳が解ける前にエホバの証人をやめた。中学生にして人生の本質は、エホバの証人の教えに存在しないと気付いたから。洗脳が解除されることなく脱会した。

中学生の私は、エホバの証人としての活動を両親に強制されていた。そうしながらも、サッカーに熱中していた。その時に気付いた。ボールを蹴っている瞬間だけが、人生の全てだと。一瞬の輝きだけが、人生の成果だと。

このときに、エホバの証人をやめようと決断した。やめなければならないと思った。

エホバの証人を続けて、永遠の命を得ても意味がない。つまらないエホバの証人だらけの、クソ真面目な楽園は、パラダイスではなく、私にとっては永遠の地獄

人生は儚く、一瞬であるからこそ意味があり、輝きを放つ。ボールを蹴り続けて、ハルマゲドンで潔く死ぬべし。

まだ中学生だった私にとって、両親を裏切ることになるのだけが心残りだった。「もう集会に行かない」と、両親に告げるのに一年近くかかった。この間ずっと苦しみ続ける。

決して、一瞬の輝きだけが人生の成果ではない。積み重ねたモノを回収する、実りの時期がある。私がそれを知るのは、ものみの塔の洗脳が解けてからだった。

元エホバの証人2世の洗脳が解ける瞬間

洗脳が解けたのはその後、7~8年後。エホバの証人脱会の直接の原因になった、サッカーもやめてしまった頃。「ハルマゲドンってまだかよ」と思い、インターネットで、「油注がれた残りの者」について調べたのがきっかけ。

インターネットで出てきたのは、ものみの塔の不義の数々。ネットの情報なので話半分だとしても、私の洗脳が解けるのに十分だった。ものみの塔は大ウソつき。それを信者に隠すために「ネットを見るな、背教者に接触するな」と、情報統制を敷いている

こう気付いて、私の中のすべての点がつながる。今まで感じていたものみの塔の教理に対する疑問や、エホバの証人があまりにも醜く愚かに見えた理由。

エホバの証人は特別愚かで、劣等感を抱えている人間の集団だった。自分も含めてエホバの証人全員が、見事にものみの塔に騙されていた。まさに取って喰われる弱者の羊。

エホバの証人2世の自分探し

エホバの証人2世の戦いは長い。

  1. 洗脳が解けること
  2. 脱会すること

その2つを果たすだけでも、多額の代償を強いられる。この後でようやく、ゼロから自分を探さなければならない。ものみの塔や親に押し付けられたモノではなく、自分で見つける人生の意義。

抑えつけられてきた子どもの頃の自分から自由になり、本来の自分が何者であるかを考えなければならない。これは、体罰と洗脳の影響で、組織や親に依存するしかなかったエホバの証人2世には重い課題となる。

私はエホバの証人をやめてから、7~8年で洗脳が解けた。洗脳が解けて、「ハルマゲドンは来ないし、エホバはいない」と確信した。ここから、私の場合は社会復帰までさらに8年かかった。

この8年間は、ギャンブル、アルコール、喫煙、さまざまなモノに依存し、やっと自立することができた。この間、家族や社会にも迷惑をかけ続けた。

もっとストレートに、元エホバの証人2世たちが社会に羽ばたけないだろうかと思う。このために、私はこのブログを発信し続けている。

エホバの証人の人たちが気付くべきことは、自分自身が貴重な存在だということ。そして、その貴重な自分の時間は、もっと丁重に扱うべきモノ。下らない日常を送っている場合ではない。ましてや、ものみの塔のために使うなど論外。

エホバの証人2世のマインドコントロールが解ける瞬間


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