ズレまくりのカルト親、早く風呂入れ
『星の子』、映画版を見て後味が悪いと言っていたわりには原作にも手を出してしまった。AmazonのAudibleで会員無料だったので聴く。こんなにも惹かれてしまうのは、宗教2世問題の占める割合が私の中で大きいからか。
主人公の両親は宗教にハマり途方もなくズレている。ラストシーンを聴きながら、私は「早く風呂入れ」とずっと突っ込んでいた。そんな親のような者でも、子供を愛している。この愛が宗教2世の子供の足かせとなる。
親の信じちゃっているモノを否定できない。親の愛を拒絶できない。ゆえにカルトから逃げられない。
私はカルトにハマる親を捨てる覚悟でエホバの証人を脱会したのだが、相当に悩んだ。私自身も洗脳され、カルトを信じちゃっていたのだが、それはさほど関係なかった。
信じてしまっている神から裁かれようが、それは私自身の問題で覚悟を決めるだけ。甘んじて裁きを、死を受け入れる。
ただ、親の期待や愛情を裏切るのは難しかった。決断はできていて、実行に踏み出せないままひたすら時が過ぎた。
そうしてダラダラと脱会出来ないままカルトの中で時を過ごすと
薬を飲まされ、ICチップを埋め込まれ、催眠術をかけられ
高額の壺や水晶を買わされ、人生の全てを損なうことになる。
世界を広げることの効能
片思いの先生に、両親が公園でカッパみたいなカルト儀式をやっているのを、見られるシーン。
私にはそのすべてが見慣れた光景だった。それなのに、初めて見たと思った
客観的に見ると不気味なカルト。家族の中だったり、カルト集団の中で染まるとその異常さに気付かない。主人公は学校、親戚といった宗教と関係のない場で、自身の家族の行いの異常さを知らしめられていく。
小学校の頃から
「あそこの家の子と遊んじゃいけません」と、ドラマに出てくるようなセリフを親から言われたという子も中にはいた
小学生の初めの頃は、学校よりカルトの方が占める割合が大きいので、自分の家の異常さに実感が伴わない。それこそ学校の方をドラマのよう、非現実と捉えてしまう。
自分の浸っている世界が異常かつ現実。と認識できない。ドラマでは描ききれない程に異常なカルトの世界。その真っ只中にいることを理解できない。本人にとっては、現実の方が異常なドラマの世界に感じられる。
宗教2世の子供は、接する世界が広がっていくことで、自分の置かれた現実を理解し始める。これはマインドコントロール下にある大人の信者にも有効で、カルト界だけでなく、違う環境に身を置くと、属しているカルトの異常さが分かる。
これは何も対宗教だけの効能でなくて、何にでもあてはまる。会社だけとか、家庭だけとかに居場所を限定しない。親戚とも地域とも、子供の学校とも、SNSでもいい。趣味のクラブに入ったり、副業をしたり、(エホバの証人以外の)ボランティアをしてみたり。
世界を広げておけば、ある場で酷い目に遭ったって、それは自分が悪い訳ではなく、その場の問題、もしくは自分がその場にマッチしないだけと割り切れる。異なる場に逃げ込むことだって可能。
これを事前に防いでいるのがエホバの証人の世界なのだが。
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