20世紀末、ハルマゲドンに怯える元エホバの証人2世

エホバの証人の両親が、急に放任主義になった理由

私は中学2年生の秋にエホバの証人をやめた。そして高校へ進学、気ままな生活を送る。高校2年の頃から、喫煙、飲酒を始め、家にも帰らないような生活を始めた。

その頃は、両親もまだエホバの証人だったが、特に厳しく言われるようなことはなかった。

両親にしてみれば、私がエホバの証人をやめてしまえば、それ以降どこまで道を踏みはずしても同じことだった。どうせハルマゲドンというこの世の終わりで死に別れる。それなら、息子の生活態度がどうだろうと関係ない。

完全な放任だった。手に負えない、というのもあったのかも知れない。一番は、両親はエホバの証人基準しか持ち得なかったので、どうして良いのか分からなかったのだろう。

エホバの証人の脳裏には、ハルマゲドンが常に焼き付いている。神が下す裁きの火による、この世の終わりがハルマゲドン。この最終戦争を生き残れるのは、エホバの証人だけという設定になっている。

エホバの証人は、ハルマゲドンへの恐怖により、精力的に宗教活動を行っている。

エホバの証人基準で不適切であれば、ハルマゲドンで滅ぼされる。両親にしてみれば、私がハルマゲドンで死ぬのなら、現在の世界で喫煙していようが、警察に捕まろうが同じことだった。

私の両親は、親として不適切だった。その理由はエホバの証人だったから。ハルマゲドンという妄想に囚われ、子どもの教育を放棄。

元エホバの証人2世に残された時間

私は、エホバの証人をやめたものの、当時はまだものみの塔の洗脳下にあった。私にとってもハルマゲドンは恐ろしく、今、この瞬間にでも自分の体が天から降る業火で焼かれる、という恐怖に囚われていた。

私に残された時間は少ない。その間にやれることはやり尽くしたい。そんな気持で私は高校生活を過ごしていた。

喫煙、飲酒、ギャンブル、子どもの頃から禁止されていたテレビゲーム、暴力的なテレビ番組、性描写のあるテレビドラマ、映画、まだ女性を知らなかったし、車にも乗りたい。

エホバの証人として禁止されていたことや、それ以外のこと、何もかもをやらなければならない。そういう強迫観念に囚われていた。

高校2年生の頃には女の子とつき合い始め、自動車免許取得と同時に親の車を奪取。

あらゆることに忙しく過ごしている間に、私の高校生活は過ぎ去っていった。高校入学時に上位だった成績は、順調に低下し、勉強にはほとんどついていけなくなり、高校生活は終了。

私が通っていた学校は、高校とその上の過程がセットになっていた学校だったので、そのまま繰り上がり短大過程へ進む。

高校過程の卒業と同時に、順調に童貞も卒業。いつハルマゲドンが来ても良い、心残りのない日常を送っていた。

しかし、ハルマゲドンはなかなか来なかった。そうしている間に21世紀が近づいてきた。世間は世紀末だ、ミレニアムだと浮かれている頃。

2000年問題がどうのこうのと言われていたが、その2000年が来る前にハルマゲドンが起こると、私は考えていた。少々面食らいつつも、私は、来たる新世紀を浮かれた気持ちで待っていた。

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