いのちの電話
『カルトの花嫁』8章。
この章では「いのちの電話」が紹介されている。誰にも頼れない、相談できないときの相談先。
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相談先を間違えると、取り返しのつかないことになるケースがある。信用できると思っていた人に突き放されたり、思ってもみない回答が返ってきてショックを受けたり。そんなときのために、相談先の候補としての「いのちの電話」。
一番ダメな相談先は、現実を見ない人たち。カルトの中の人たち。カルトに囚われになったままの人たち。価値観が相談相手でなくカルトを中心に回っているので何の解決にもならない。問題がこじれるだけ。
元エホバの証人2世の歪んだ死生観
私は生まれながらのエホバの証人2世だった。エホバの証人の教理ではハルマゲドンというこの世の終わりが予言されている。
ハルマゲドンでは、エホバの証人以外のほぼ全人類が神に皆殺しにされることになっている。その終わりはすぐにも、明日にでも到来することになっていた。
特に聖書にそんなことが書いてあるわけではなく、その日を予言する者こそ偽予見者であると釘を刺されている。しかし、エホバの証人はそんな都合の悪いことには目も留めず、ひたすらにハルマゲドンの到来を待ち望んでいる。
エホバの証人にとってはハルマゲドンは間違いのない真理。無根拠のハルマゲドンを妄信できるほどにマインドコントロールが完成されている。
子どもの私も同様で、ハルマゲドンの到来は私にとって疑いようのないことだった。つまり、クラスの同級生も先生も、親戚も、隣近所の人も皆が皆、ハルマゲドンが来れば死ぬ。明日にでもそこら中の人間が死にまくる。
これが子どもの私に養われた知識。誤った知識。この誤認によって私の死生観は形成された。人類全員の命は吹けば飛ぶように軽い。明日にでもほぼ全ての人が死に絶えるのだから。
そして、自分自身の命も軽い。堅苦しい規則を押し付けてくる神エホバをちょっとでも呪ったり、逆らったりすれば自分自身の命も神によって奪われる。だから、自らの命も吹けば飛ぶように軽い。
私は、エホバの証人脱会直後はハルマゲドンの到来をまだ信じていた。明日にでも神によって殺され憤死すると思い込んでいた。
元から命の価値が軽いうえに、ハルマゲドンまでの時限付き死刑宣告まで受けている。死がすぐそばにあった。
なので、車のメーターが振り切れるほどのスピードで走っても微塵も恐怖心を感じなかったし、鉄パイプで殴り合う覚悟を決めたこともある。殴って殺しても、殴って殺されてもたいした問題ではない。どうせ近いうちにほぼ全員がハルマゲドンで突然死を迎えるのだから。そんな
歪んだ死生観を持っていたら、やはり死が身近にある。この人生は一度限り。だからこそ命より貴重なものなどない。マインドコントロールが解けてそう気づいたからこそ、安易に生命を投げ出す選択をしなくて本当に良かったと今では思う。
カルトの中の人たちは、多かれ少なかれこんな歪んだ価値観を抱いている。そんな人に何か相談してマトモな答えが返ってくるわけがない。
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