ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
『みんなの宗教2世問題』5章「宗教2世はいかに描かれてきたか」。
本章は
宗教2世の当事者が、宗教2世問題に直接的または間接的に関わる創作物に対してどのような感じ方や考え方をするかについて、その一例を示したエスノグラフィー
エスノグラフィーというのは、集団を観察して記録する研究手法のことらしく。宗教2世被害者が宗教2世が関連する創作物にどんな反応を示したかの観察記録といったところか。
いきなり出てきたのが、クエンティン・タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。
ん?これ宗教2世関係あったっけ?
現実世界でのロマン・ポランスキーの妻シャロン・テートを惨殺したチャールズ・マンソンのカルト集団「ファミリー」の共同体が描かれる
なるほど。カルトつながり。
私的には、この映画に出てくるのは1世信者っぽいのだけだったので、宗教2世として心がざわめくことは一切なく。しかも、ヒッピー系なので、表面を必死に取り繕うエホバの証人とは程遠いわけで。
しかし、人によっては、このレベルでも元エホバの証人2世心に一石投じられるらしく。少なくとも、本書著者はそのようで。
エホバの証人も「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のカルトも、弱者が依存させられ搾取される構造は共通。人によっては宗教アレルギーが反応する模様。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、宗教絡み問題はスカッとさせてくれるので、個人的には良い映画。というか、主演共演の2人が超豪華だし、タランティーノ作品なので一度は見るでしょ。
エホバの証人2世という出自を明かせない理由
筆者は四〇代になるまで、宗教2世だとカミングアウトする勇気を持たなかった
同じく私もそんな勇気はない。私が公式にカミングアウトしているのは、妻と妻の親族だけ。エホバの証人脱会からやがて30年経つが、個人的にはそれくらいのトップシークレット。やがて30年来となる友人たちにも打ち明けていない。
友人連中はうっすら知っている気配もあるが、何となく言いそびれて今に至る。今さら言ったところで、「そんな昔の話、今のお前と何か関係あるの?」と言ってくれそうな連中だから、長い付き合いになったわけで。
私の元カルト信者という秘密は、友人関係には「わたしにも、悲しいことはあるのだよ」(シャア・アズナブル)くらいのギャグで流せるレベルなのだが、ベラベラ話すことでもないので、いまだに伏せている。
あとは職場の上司・同僚。もう30年も前のことなので、出自がバレたところで私の社会的評価が変わることもないのだが、履歴書に書くことでもないので、明かさずにいる。
とにかく、元カルト宗教2世という出自は心の奥底に留めておきたい少年時代の非常にデリケートな傷。
といいつつも、SNSでは積極的に発言しているし、公官庁やマスコミ、士業関係者には過去のことをゴリゴリ話している。もはや客観視というか、30年前の自分事が他人事なので、この辺は平気。
映画「パーフェクトワールド」のように、エホバの証人だからハロウィンができず苦悩する少年くらい具体的に表現されないと、エホバの証人として虐待されていた頃の自分が自分事としてよみがえってこない。
個人としての私を認識していない人にはいくらでも過去のことを話せるのだが、個人としての私を認識している人に対して、カルト宗教2世という出自をさらすのには抵抗がある。
個人としての私に元エホバの証人2世という属性を付与されるのが嫌なのだろう。そりゃそうだろ。人生の汚点だからな。