控訴理由書を限定公開
ものみの塔と裁判をしている件。控訴理由書を限定公開中。最後の部分。文書提出命令の必要性を説いた第6章と結びの第7章。
第6 寄附金の使途解明のための資料開示の必要性と法的根拠
(1)資料開示の目的と争点との関係
控訴人は、控訴理由書と併せて民事訴訟法第220条を根拠として文書提出命令申立書を提出し、被控訴人に「財産目録、収支計算書、貸借対照表」(以下、「同文書」という。)の提出を命じるよう裁判所に請求する。第一審では、これらの資料が提出されておらず、控訴審での再検証が求められる。
控訴人は文化庁に対して同文書の開示請求を行ったが、実質的な内容はすべて不開示とされており(甲19・甲20)、被控訴人の主張の妥当性を検証するためには、裁判所による文書提出命令が不可欠である。
控訴人は、文化庁の開示により同文書の存在が確認できている年度について、文書提出命令申立書にて提出命令を請求している。また、控訴人が寄附を行った令和6年1月19日と、被控訴人が乙14(第一審提出分)において「裁判費用に充てることもある」と認めた令和3年5月1日を含む期間の請求としている。
同文書の提出が必要となる理由は以下のとおりである。
- 児童性虐待裁判費用への寄附金流用の検証
控訴人は、被控訴人が日本で集めた寄附金が海外の児童性虐待の裁判費用等に流用されていると主張しており、寄附金の送金ルートや出入りの検証には同文書の開示が不可欠である。
- 説明責任履行状況の客観的確認
被控訴人は寄附金の使途について「海外のことは知らない」と回答しながら、後に海外送金の事実を認めている。このような矛盾を検証するには、実際の財務資料に基づく客観的確認が不可欠である。
寄附金がどの法人に送金され、どのような支出に充てられているかを明らかにすることは、寄附者の合理的期待と説明責任の履行状況を鑑み、社会通念上相当な範囲を逸脱しているかを判断するために必要な情報である。
- 寄附金運用の正当性の検証
被控訴人は第一審第2準備書面2頁において、同文書の文化庁への提出を根拠に寄附運用の正当性を主張している。しかし、同文書の中身が開示されていないため、被控訴人の主張について妥当性を検証できない。よって、被控訴人の寄附金運用の正当性の検証のために、同文書の開示が不可欠である。
- 寄附金運用の透明性の検証
被控訴人の寄附金運用の実態を把握することは、寄附金の使途の透明性を問う本件訴訟の核心的争点である。
また、被控訴人は、寄附金運用の透明性を主張しており(第一審第1準備書面1頁)、この検証のためにも同書類の提出は必要である。
(2)民事訴訟法に基づく文書提出義務
民事訴訟法第220条では、以下の条件の場合に文書提出が義務付けられている。
1. 訴訟当事者が訴訟で引用した文書を自ら所持している場合
2. 文書が挙証者の利益のために作成された場合
今回の場合、被控訴人が「宗教法人法の規定に基づき、毎年、文化庁に対し、財産目録、収支計算書、貸借対照表を提出しているから、寄附の扱いについて何の問題もなく、法律の規定通りに扱っている」と主張しており(第一審第2準備書面2頁)、1. の訴訟での引用した文書であるという条件は満たしている。また、今回提出命令を申請している年度については、控訴人が文化庁に開示請求した際に、同文書の存在を確認しており、宗教法人法第25条により、同文書は事務所に備える必要があるため、1. の自ら所持していることも成立している。
控訴人は、被控訴人に対する寄附者である。同文書の提出は、寄附者の利益のためにもなされており、寄附金がどのように扱われているか、その透明性を確保することが寄附者である控訴人の利益に直結する。また、同文書は、寄附者にとって資金の使途や運営の適正性を確認する手段となり得る。よって、2. の挙証者である控訴人の利益のために作成されたという点についても、条件を満たしている。
(3)宗教法人法に基づく閲覧権の正当性
宗教法人法第25条第3項では、信者その他の利害関係人が「正当な利益を有し、不当な目的でないと認められる場合、同文書の閲覧を請求できるとされている。
被控訴人は控訴人からの同文書の閲覧請求に対し、控訴人の訴訟行為は訴権の濫用に該当するため、「正当な利益」はなく、控訴人が被控訴人に対し誹謗中傷、権利・利益を侵害、業務の遂行を妨害する「不当な目的」で閲覧請求を行っている、として拒否した(甲18)。
しかし、第一審判決は、本件訴えが訴権の濫用に該当するとの被控訴人の主張は採用できないと判断しており(第一審判決文10頁)、控訴人の訴訟提起が法的権利の行使として認められることが確認された。よって控訴人は「正当な利益」を有する。
また、控訴人が本件寄附を実際に行い、寄附金の使途に関する具体的な疑義を提示していることは、単なる敵意や嫌がらせではなく、社会正義に基づく行動であり、閲覧請求は訴訟の争点に直結する合理的行為である。
被控訴人がこのような公益的問題提起を「不当な目的」と断定して資料開示を拒否することは、訴訟遂行上、誠実義務を欠く対応である。寄附金運用の透明性を謳いながら、寄附者の合理的疑問に対して資料の閲覧を拒否する被控訴人の姿勢は、説明責任の回避であり、人格的評価に依拠して公益性を有する問題提起を排除しようとする姿勢である。
(4)最高裁判例に照らした開示の必要性
被控訴人は第一審第2準備書面2頁で自ら同文書の存在を述べていて、文化庁に同文書を提出していることをもって、寄附金の扱いに何ら問題がないと主張している。
しかし、令和6年7月11日最高裁判決は、財務書類を提出し宗教法人格を継続していることが、寄附勧誘の適法性を担保するものではないことを判示している。(別紙判例一覧表参照)
よって、形式的な文書提出の手続きによって実質的な適法性は保証されず、同文書の実質的な内容の開示が必要である。
(5)控訴審における審理の要請
控訴審においては、被控訴人の寄附金の運用構造を明らかにするため、同文書の文書提出命令が発令されるべきである。同文書の提出は、訴訟の公正な進行と、真実の発見と寄附者保護の観点から必要不可欠である。
総括的評価
本件訴訟は、寄附金の使途の透明性と寄附勧誘の適法性を問う公益的問題提起であり、寄附者保護の観点からも、寄附金の流れと運用実態の解明が不可欠である。 控訴人は、寄附者としての立場から、寄附金が児童性虐待の裁判費用等に流用されている蓋然性を指摘し、寄附勧誘の説明責任の履行状況を検証するために、同文書の提出を求めている。第一審では、これらの資料が提出されておらず、控訴審での再検証が求められる。
宗教法人法第25条第3項および民事訴訟法第220条に基づき、控訴人は正当な閲覧権と文書提出請求権を有しており、同文書の開示は訴訟の公正な進行と真実の発見のために不可欠である。
控訴審においては、寄附金の使途に関する実態を明らかにするため、同文書の提出が命じられるべきである。同文書は、寄附勧誘の適法性を判断する上で不可欠なものであり、提出された資料をもとに、控訴人・被控訴人双方の主張の妥当性が実質的に検証されるべきである。
よって、控訴審においては、寄附金の使途に関する真実の発見と寄附者保護のため、文書提出命令の発令は不可避である。
第7 結論と請求
以上の通り、第一審判決は、事実認定および法的評価において複数の誤りを含んでおり、それらは判決の結論に直接影響を及ぼすものである。控訴人が主張する寄附勧誘の不当性は、複数の要素が複合的に作用する構造的問題であり、これらを総合的に勘案すれば、被控訴人の寄附勧誘が社会通念上相当な範囲を逸脱しているのは明らかであり、第一審判決はこれらの点について十分な審理を尽くしていない。
よって、控訴審においては、寄附者保護と公益的問題提起の観点から、第一審判決の誤りを是正し、寄附金の使途の透明性を確保するための実質的審理が尽くされるべきである。これにより、司法が公益的問題提起に応答する責務を果たすことが期待される。
以上の理由により、控訴人は、第一審判決の取消しを求め、被控訴人に対し、寄附金1,000円の損害賠償を命じる判決を求める。
控訴審においては、寄附者保護の観点から、上記の各論点を総合的かつ実質的に再評価されるべきである。また、寄附金の使途に関する実態解明のため、控訴人が提出した文書提出命令申立書に基づき、被控訴人が保有する財務諸表の提出を命じられることが、真実の発見および訴訟の公正な進行に不可欠である。
(別紙)判例一覧表
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裁判所/判決日/事件番号 |
事案概要/判示要旨 |
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最高裁判所 令和6年7月11日 (令和4(受)2281) (旧統一教会事件) |
■事案の概要 高齢の女性信者が、旧統一教会からの勧誘を受けて長年にわたり高額な献金を行い、総額は1億円を超えた。晩年には認知症と診断され、生活費も教団関係者から受け取る状態だった。本人は公証人役場で「教団に損害賠償請求等をしない」とする念書を作成したが、損害賠償請求訴訟を提起。原審(東京高裁)は勧誘行為が違法ではないとして請求を棄却したが、最高裁はこれを破棄し、勧誘の違法性判断に違法があるとして東京高裁に差し戻した。 ■判示要旨 · 合理的に判断することが困難な状態での不起訴合意は、公序良俗に反し、無効である。 · 寄附者が寄附をするか否かの適切な判断をすることが困難な状態での寄附勧誘は、違法と評価される可能性がある。 · 寄附勧誘が社会通念上相当な範囲を逸脱していれば、不法行為法上違法と評価される。 · 勧誘行為の違法性判断において、個別事情を単独で検討するのみでは足りず、勧誘態様や寄附者の状況、寄附の経緯や目的などの勧誘に関する諸事情を総合的に考慮した上で、社会通念上相当な範囲を逸脱しているか判断すべきである。 · 宗教法人が財務書類を提出し法人格を維持していた事実があっても、それは寄附勧誘の適法性を担保するものではない。 |
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最高裁判所 昭和50年10月24日 (昭和48(オ)517) (ルンバール事件) |
■事案の概要 患者が腰椎穿刺(ルンバール)を受けた後に後遺症が発生した医療事故において、医療行為と損害との間の直接的な因果関係の証明が困難であったが、経験則に照らして「高度の蓋然性」が認められ、損害賠償責任が肯定された。 ■判示要旨 訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、高度の蓋然性を証明することであり、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであれは、その認定に足りる。 |


