控訴理由書を限定公開
ものみの塔と裁判をしている件。控訴理由書を期間限定公開中。第3弾。
ものみの塔の寄附勧誘における問題点6つのうちの(1)番目。
(1) 児童性虐待裁判に寄附金が流用されていると推認される
被控訴人が日本で「宗教活動・人道活動」に使用するとして集めた寄附金を、海外でエホバの証人が関連した児童性虐待の裁判費用や賠償金に流用するのは、明らかに不当寄附勧誘に該当するものである。第一審の判断もこの点は採用している。
乙13の2(第一審提出分)の2頁末尾には「エホバの証人の世界的な活動を支援する世界本部の施設の建設は世界的活動への寄付により賄われています」と記載されている。エホバの証人の世界本部は米国に存在する(乙2・第一審提出分)ため、被控訴人が世界的活動への寄附金を米国へ送金していることは明らかである。そして、本件寄附は同世界的活動へ行われたものである。
甲9~11(第一審提出分)より、エホバの証人の米国法人や統治体が児童性虐待裁判で敗訴し多額の賠償責任を負い、現在も係争中で支出を必要としている。
甲13(第一審提出分)より、統治体が世界中の寄附金の使途の決定権・配分権を握っていることは明らかである。乙2(第一審提出分)には、統治体はエホバの証人の世界本部に属していることが記載されている。
被控訴人は、令和7年7月11日提出の第一審第2準備書面6頁で米国のエホバの証人法人が児童性虐待裁判に米国内で集めた寄附を流用している事実を否定せず、むしろそれを前提に「日本から送る必要はない」と反論している。これは、エホバの証人の米国法人が児童性虐待の裁判費用に寄附金を使っている事実を、被控訴人が認めたものである。
例示として、以下のような構造が想定される。あるリーダーが、仲間の金銭をすべて集め多額の資金を管理しているとする。そのリーダーは資金の使途を自由に決められるものとする。もしも、そのリーダーが繰り返し自身の失態を補うために大きな支出を行っているとしたら、しかも、仲間の人数や活動状況は事細かく管理されているのに、集めた資金の出納の報告が一切されないとしたら、その場合、自身の失態を補うための支出が、仲間から集めた金銭からされていると考えるのは妥当である。
被控訴人が日本で集めた寄附金は米国の世界本部に送金されており、世界本部に属する統治体が児童性虐待裁判で敗訴し多額の賠償責任を負い、現在も係争中で支出を必要としている。その統治体が寄附の使途を決めるのであり、さらに米国内の寄附については児童性虐待の裁判費用に流用されているのであれば、被控訴人が日本で集めた寄附金も同訴訟費用に流用されている、と推認するのは合理的である。
以上の事実について、不当寄附勧誘防止法の配慮義務の観点から評価する。
(a)正体隠しによる寄附勧誘
消費者庁の逐条解説においては、「いわゆる正体隠しによる不当な寄附の勧誘を防止する」と明記されており、寄附者が寄附の相手方や使途の実態を把握できないまま金銭を提供する構造を問題視している。
控訴人が寄附した金銭は、被控訴人から米国の世界本部に送金され、最終的な使途は世界本部の統治体の裁量に委ねられている。しかし、被控訴人の寄附勧誘サイトには寄附の使用主体の統治体という名称やその活動内容は一切記載されていない(乙13・第一審提出分)。
さらに、統治体が児童性虐待裁判で敗訴し、多額の賠償責任を負っているという「統治体の正体」は寄附者には伏せられている。
本件サイトの「裁判所の判決」に関する項目には児童性虐待裁判のことは記載されていない(甲16の1~5)。被控訴人の寄附勧誘サイトでも同様である。少なくとも、10件以上の児童性虐待訴訟と100億円を超える賠償金額が認められるのにも関わらず、一切記載されていない(甲3・第一審提出分)。
被控訴人は児童性虐待裁判に関する事実を寄附者に開示せず、令和7年5月7日提出の第一審第1準備書面14頁においても控訴人の提出した児童性虐待の裁判資料(甲3・第一審提出分)の「正確性・信頼性がそもそも不明」として、同裁判の存在を否認する姿勢を示した。これは、児童性虐待裁判の存在を意図的に否認し、寄附者に対して重要な事実を伏せる姿勢を示すものである。
日本の寄附者からは寄附の使用主体である統治体の真の姿は見えず、正体が隠されている。このような説明状況の不備、または隠蔽により寄附者の理解が不足している構造は、逐条解説が示す「正体隠し」の典型例に該当する。この点を控訴審で新たに評価すべきである。
(b)寄附の使途についての説明責任の不履行
不当寄附勧誘防止法第3条に定める「配慮義務」は、寄附者の意思決定に影響を与える事実を適切に開示し、寄附の実際の使途に関する情報提供に配慮することを求めている。
令和6年7月11日最高裁判決は、寄附者が寄附をするか否かの適切な判断をすることが困難な状態での寄附勧誘は、違法と評価される可能性があると不当寄附勧誘防止法3条1号に基づいて判示している。(別紙判例一覧表参照)
被控訴人は、寄附勧誘サイトにおいて使途を「宗教活動・人道活動」と記載しながら、寄附金の最終使用者である統治体の存在や活動内容(児童性虐待裁判で敗訴し多額の賠償責任を負っていること・係争中の案件があること)について一切説明していない。
被控訴人は、寄附金の使途について「海外の法人が何をしているかは知らない」(甲7・第一審提出分)と回答している。さらに、第一審第1準備書面において、これらの裁判の存在について一切触れず、控訴人が提出した児童性虐待の裁判資料(甲3・第一審提出分)に対して事実関係を認めることなく「正確性・信頼性がそもそも不明」と主張した(第一審第1準備書面14頁)。
統治体が児童性虐待裁判で敗訴し賠償責任を負っている事実は、寄附者の意思決定に重大な影響を与える情報である。それにもかかわらず、本件サイトにはこれらの事実が一切記載されていない。
これらの事実を伏せたまま寄附を募ることは、寄附者の寄附をするか否かの最終意思決定において必要な判断要素を損なうものであり、配慮義務違反が成立する。
控訴人は、これらの事実が本件サイトに明示されていれば、寄附を行うことはなかった。
被控訴人の寄附勧誘は、寄附者の判断に資する情報を提供していない点において、説明責任を果たしておらず、不当寄附勧誘防止法第3条1号および3号に定める配慮義務に違反するものである。第一審判決はこの点についての判断を欠いており、法的判断として誤っている。
(c)寄附の目的と実際の使途とがおよそ異なる場合
第一審の判決のとおり、本件寄附の実際の使途が、本件サイトの記載とおよそ異なっていて、被控訴人とは別の法人が控訴人の主張する訴訟費用等に使用していた事実は、証拠が不十分なため証明できない。しかし、控訴人は、この点について高度の蓋然性があるものと考える。その根拠を以下にまとめる。
- 日本で集めた寄附がエホバの証人の米国世界本部に送金されている
(乙13の2・第一審提出分) - エホバの証人の米国世界本部の統治体が寄附の使途を管理している
(乙2・甲13・第一審提出分) - その統治体や世界本部が児童性虐待訴訟で敗訴し、多額の賠償責任を負っている
(甲3・甲11・第一審提出分) - 統治体や世界本部には現在も係争中の児童性虐待裁判が存在する
(甲3・甲11・第一審提出分) - エホバの証人の米国法人が米国内で集めた寄附金は、児童性虐待の裁判費用に流用されている
(第一審第2提出書面6頁)
以上のことから、日本で集めた寄附金が米国のエホバの証人の世界本部に送金され、エホバの証人が関係した児童性虐待の裁判費用や和解金等に流用されていると認めるに足る高度の蓋然性がある。
本件寄附金が控訴人の挙げる海外の児童性虐待の裁判費用等に使用されていると認めるに足りる証拠がなくとも、本裁判の過程で、高度な蓋然性があるとするに充分な事実が積み上がっており、控訴審ではこの点を再評価すべきである。
昭和50年10月24日最高裁判決では、訴訟上の立証は、「高度の蓋然性」を証明するだけで判断に足りるとされている。その程度は、通常人が疑を差し挟まない程度とされている。(別紙判例一覧表参照)
よって、本件においては資金の流れを完全に証明できなくとも、被控訴人の寄附の運用構造から、被控訴人が日本で集めた寄附金が米国の児童性虐待の裁判費用に流用されている蓋然性が高いことを前提に、寄附勧誘の適法性を再審理が不可欠である。


