第5章「法令解釈の誤り」
ものみの塔と裁判をしていた件。最高裁への私の上告提起が受理されなかったため、私の書いた上告理由書を公開供養中。第5章「争点外判断」と結びの第6章。
第5 争点外判断(民事訴訟法312条2項6号)
5-1 一審と原判決で判断枠組みが異なる点
事実関係:一審は「寄附金の実際の使途に関する証拠の有無」を基準として誤認の成否を判断した。他方、原判決は、当事者の主張にも争点整理にも現れていない「寄附前の疑念の有無」という心理状態を主要判断枠組みとして採用した。
問題点:「疑念の有無」は、当事者双方が主要争点として主張・立証していない論点であり、争点整理にも含まれていない。にもかかわらず、原判決はこの新たな判断枠組みを主要理由として誤認を否定しており、典型的な争点外判断に該当する。
法的帰結:争点整理にない論点を主要判断に用いた原判決は、審理構造を逸脱した違法な判断であり、民事訴訟法312条2項6号にいう理由不備に明白に該当し、破棄を免れない。
5-2 当事者の防御権侵害
事実関係:原判決が主要判断理由として採用した「寄附前の疑念の有無」という心理状態は、争点整理に含まれておらず、当事者双方が主要争点として主張・立証していない論点である。
したがって、上告人は、この心理状態を主要争点とすることを予見できず、反論・立証の機会を与えられていない。
問題点:争点整理にない論点を主要判断に用いることは、当事者の防御権を侵害する典型例である。とりわけ、本件では、一審の判断枠組み(使途の証拠)を維持するとの外観を保ちながら、原判決が審理終盤に至って新たな判断枠組み(疑念の有無)を導入しており、上告人にとって不意打ちとなったことは否定できない。
このような審理構造の変更を事前に告知せず、反論・立証の機会を与えないまま結論を導いたことは、手続の公正を根本から損なう重大な違法である。
法的帰結:争点外の主要判断に基づく原判決は、当事者の防御権を侵害し、民事訴訟法312条2項6号にいう理由不備に明白に該当し、破棄を免れない。
5-3 判例
以下の最高裁判例は、5-1(争点外判断)および5-2(防御権侵害)の双方を直接補強するものである。
最高裁は、裁判所が判断の前提となる重要な要素について、当事者に主張・立証の機会を与えないまま独自に前提として結論を導いた場合には、審理不尽・理由不備の違法があると明確に判示している(平成8年10月31日判決・平成3年(オ)1380)。
同判決は、全面的価格賠償の可否を判断するにあたり不可欠である「支払能力」という核心的要件について、原審が何ら審理・認定を行わず、これを当然に存在するものとして結論を導いた点を違法としたものである。
すなわち、最高裁は次の法理を確立している。
(1)判断の基礎となる要素が争点化されていないにもかかわらず、
(2)裁判所が事前の釈明なくこれを主要判断に用い、
(3)当事者に反論・立証の機会を与えないまま結論を導くことは、
当事者の防御権を侵害する手続違背である。
本件原判決は、争点整理に含まれていない「寄附前の疑念」という新たな判断基準を、事前の釈明なく導入し、これを主要な判断枠組として誤認の成否を判断したものである。「寄附前の疑念」は、当事者双方の主張にも、一審および原判決の争点整理にも一切現れていない論点であり、上告人はこれについて反論・立証の機会を全く与えられていない。
したがって、本件原判決は、上記最高裁判例が示す法理に照らしても、争点外判断および防御権侵害という重大な手続違背を犯しており、民事訴訟法312条2項6号にいう理由不備に明白に該当する。よって、原判決は破棄を免れない。
第6章「結論」
第6 結語
以上のとおり、原判決には、判断枠組みの変更に関する説明欠如、不当寄附勧誘防止法3条3号が採る「説明状況」および「寄附者の理解」に基づく判断構造の誤解、重要論点の審理欠落、文書提出命令に関する審理の欠如、事実認定と法的評価の逆転、争点外判断および当事者の防御権侵害等、民事訴訟法312条2項に掲げる破棄事由に該当する重大な違法が累積している。これらはいずれも判決の結論に直接影響を及ぼすものであり、原判決は破棄を免れない。


