控訴理由書を限定公開
ものみの塔と裁判をしている件。控訴理由書を期間限定公開中。第6弾。ものみの塔の寄附勧誘における6つの問題点のうちの最後(6)番目と第3章のまとめ。
(6) 不誠実な対応と情報遮断
被控訴人は、寄附金の使途や送金先について「回答する立場にない」「知らない」と繰り返している(甲5・甲7・第一審提出分)。さらに、被控訴人は、最終的には「今後このような趣旨のお問い合わせにはお答えいたしかねます」として、問い合わせを打ち切った(甲5・第一審提出分)。このような対応は、寄附者の合理的な疑問に対して誠実に向き合う姿勢を欠いており、寄附者保護の観点から極めて問題がある。
(a)正体隠しによる寄附勧誘
被控訴人は、寄附金の使用主体である統治体の実態(児童性虐待裁判で敗訴)について一切説明していない。
被控訴人は、寄附者の意使決定に必要な重要情報を提供しておらず、そのために寄附者が寄附金の使用主体や最終的な使途を合理的に把握できない構造を生み出している。この構造は、逐条解説が示す「正体隠し」に該当し、寄附者の合理的期待を著しく損なうものである。第一審判決はこの点を評価しておらず、法的判断として不十分である。
(b)寄附の使途についての説明責任の不履行
寄附者を「誤認させるおそれがないようにする」配慮義務は、「寄附者の理解等の具体的事情」に応じた説明が必要である(乙11・第一審提出分5頁)。
被控訴人は、寄附者である控訴人からの問い合わせに対して「回答する立場にない」と述べ、最終的には問い合わせを一方的に打ち切り、資料の返送まで行った。これは説明責任の明確な放棄である(甲5・甲6・第一審提出分)。
さらに、当初否定していた海外送金の事実を後に認めたことは、寄附者に対する誠実な対応を欠くものであり、信頼を裏切る行為である(甲7・第一審提出分、第一審第2準備書面6頁)。
また、控訴人の「質問1 世界的活動への寄付金は、エホバの証人が関連する別の団体を経由せず、被控訴人が直接、用途を把握して全額使用しているのか? 質問2 質問1の回答が「No」であれば、当該の別の団体がエホバの証人に関する児童性虐待の海外での裁判の賠償金支払いや訴訟費用に、世界的活動への寄付を用いているのではないか?」という2つの質問に対し(甲4・第一審提出分・第一審準備書面(1)6頁)、被控訴人はただの一度も回答していないにも関わらず、回答は充分と述べている(第一審第2準備書面3頁)。
このような対応は、寄附者の理解等の具体的事情に応じたものではなく、寄附者が合理的に判断するために必要な情報を遮断するものであり、説明責任の不履行として配慮義務違反が成立する。第一審判決は被控訴人の対応の不誠実さを評価しておらず、寄附勧誘の適法性判断として不十分である。
(c)寄附の目的と実際の使途とがおよそ異なる場合
寄附者が「人道支援」への寄附と信じて提供した資金が、実際には非人道的な児童性虐待が裁かれる訴訟費用に充てられている可能性があるにもかかわらず、使途の回答を拒否する姿勢は、寄附の目的と実際の使途を照合する機会を奪うものであり、寄附者の合理的期待を著しく損なうのであり、違法性の認定に直結する。
総括的評価
以上の通り、控訴人が主張する(1)〜(6)の問題点は、いずれも不当寄附勧誘防止法第3条1号および3号に定める配慮義務違反に該当する可能性が高く、法的評価軸(a)〜(c)に照らして検討されるべき重要な論点である。
第一審判決は、(1)の事実と(c)の評価軸の単独の組み合わせのみを検討し、他の事実・評価軸の組み合わせについては審理がなされていない。他の事実や評価軸を検討しないまま判断を下すことは、寄附勧誘の適法性を判断する上で、審理の枠組みとして著しく不十分である。
令和6年7月11日最高裁判決は、勧誘行為が「社会通念上相当な範囲を逸脱するか否か」を判断し、不当寄附勧誘防止法における違法性を認定するに際して、勧誘態様や寄附者の状況、寄附の経緯や目的など、多角的な観点から検討すべきであると判示している。(別紙判例一覧表参照)
よって、寄附勧誘の違法性は、単一の事実や単一の法的評価軸によって判断されるものではなく、寄附者の合理的期待、説明状況、使用主体の透明性、使途の乖離、対応の誠実性など、複数の要素が相互に関連し合う構造的問題であり、単一の証拠や事実認定のみに基づいては、適切な判断を導くことはできない。
控訴審においては、これらの論点を個別かつ複合的に審理し、寄附勧誘の構造的問題としての違法性について実質的な評価がなされるべきである。
控訴人が主張する各論点は、単独でも違法性の根拠となり得るが、複合的に評価することで、違法性が一層強く裏付けられる。以下にマトリクス形式で整理し、審理の網羅性と再検討の必要性を明示する。
被控訴人の寄附勧誘行為における問題点 と 法的評価軸の対応関係
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問題点 |
(a)正体隠し |
(b)説明責任の不履行 |
(c)寄附目的と使途の乖離 |
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(1) 児童性虐待の裁判費用への流用が推認 |
◎使用主体(統治体)と児童性虐待裁判との関係が隠蔽され、寄附者が実態把握できない |
◎使用主体と児童性虐待裁判との関係を説明せず、寄附者に誤認を生じさせている |
◎人道活動を謳いながら、非人道的な児童性虐待の裁判費用に流用されている高度の蓋然性がある |
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(2) 海外送金と海外団体への不関与 |
〇使用主体の活動実態を開示せず「知らない」とすることで正体隠しの構造を補強 |
◎使用主体のことを「知らない」と明言しており、説明責任の放棄が明白 |
△「知らない」とする姿勢は「宗教活動・人道活動」という目的との乖離を生み出している |
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(3) 主張の転換と矛盾 |
◎初期の否認と後の認容が正体隠しの証左 |
◎説明の一貫性を欠く対応は、寄附者の合理的判断を妨げる |
△主張の転換により使途も転換するため、目的と使途の乖離の構造を補強する |
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(4) 統治体による使途管理という構造的問題 |
◎使用主体の活動実態を開示していない点で正体隠しに該当 |
◎被控訴人が使途に関与しておらず、寄附者に対して説明不可能 |
◎人道活動を目的としながら、非人道的な裁判で敗訴している統治体が使途を決定する正反対な構造 |
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(5) 寄附金の使途の不透明性 |
◎使用主体とその活動実態が伏せられている不透明な構造 |
◎財務資料の開示を拒否し、説明責任を放棄 |
◎寄附目的と実際の使途が照合できず、乖離を推認させる構造的要因 |
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(6) 不誠実な対応と情報遮断 |
〇回答拒否が使用主体の隠蔽に繋がり、正体隠しの構造を補強 |
◎回答を拒否し、説明責任を放棄 |
〇回答を拒否し、乖離の検証機会を奪っている |
評価強度の凡例:
- ◎:当該論点のみで違法性が認定され得る
- 〇:他の論点との連動により違法性が成立し得る
- △:補強により違法性の蓋然性が高まる


