ものみの塔裁判の準備書面を公開
ものみの塔と裁判をしている件。控訴審で私から提出した控訴人第2準備書面を期間限定公開中。ものみの塔の財務文書提出命令の法的根拠について述べた第8章後半。
(2)引用文書該当性
被控訴人は、財務文書の「存在に言及しただけ」であり引用には当たらないと主張する(意見書2頁)。しかし、被控訴人は寄附運用の適正性や適法性の主張の根拠として、財務文書の内容的性質を前提に論旨を構成しており(被告第2準備書面2頁)、これは形式的な「存在の言及」を超え、実質的に内容を引用している。
大阪地決昭和61年5月28日(判時1209号16頁)は、「文書を提出せずに、その存在及び内容を積極的に申立てて心証を一方的に形成させる危険を避けるため、引用した文書は相手方の批判にさらす必要がある」と判示し、さらに「主張を明確にするために文書の存在について、具体的、自発的に言及し、かつその存在・内容を積極的に引用した場合」に引用文書に該当するとして、内容的要素を主張の根拠に用いる行為そのものが引用に該当することを明確にしている。
また、大阪高決平成23年1月20日(判時2113号107頁)は、「文書の存在及び内容を引用しながら提出しないことが信義則に反し公平性を害することに引用文書制度の根拠がある」とした上で、「提出しないことが信義則違反といえない場合には引用文書には当たらない」と判示し、引用文書該当性は形式ではなく実質により判断されるべきことを示している。
加えて、大阪地決昭和60年1月14日(判タ552号197頁)は、「文書の存在に間接的に言及し、その内容を要約して主張の根拠とした場合には引用に当たる」と判示しており、被控訴人のように財務文書の内容的性質を前提として主張を構成する行為は、典型的な「内容の引用」に該当する。
以上の判例法理に照らせば、被控訴人が財務文書の内容的性質を主張の根拠として用いている以上、本件財務文書は引用文書に該当し、提出義務を負う。それにもかかわらず提出を拒むことは、訴訟手続における信義則に反し、公平性を著しく害する。
(3)利害関係人性の認定と不当目的性の否定
被控訴人は、控訴人には利害関係も正当な利益もなく、不当な目的に基づく申立てであると主張する(意見書3頁)。
しかし、控訴人は本件寄附の当事者であり、寄附の使途の解明は控訴人の法的利益に直結する。したがって、控訴人が利害関係人であることは明らかである。
また、控訴人の閲覧請求は、寄附勧誘の適法性を検証するための正当な利益に基づくものである。
被控訴人の述べる「嫌がらせ」論は根拠を欠き、第一審においても訴権濫用は否定されている。控訴人の行動は公益性に基づくものであり、不当目的には該当しない。被控訴人が嫌がらせとして挙げる点については、第11の(4)にて反論する。
(4)利益文書・法律関係文書該当性
被控訴人は、財務文書が利益文書にも法律関係文書にも該当しないと主張する(意見書3頁)。
しかし、利益文書とは、「利益を間接的・客観的に証明し、またはこれを基礎付けるもの」であり、法律関係文書とは「契約関係を要せず、法律関係と密接な関連を有する事項を記載した文書」とされている(戸塚貴晴「民事訴訟法上の文書提出義務について」金融研究18巻1号、1999.3、150頁)。
被控訴人自身、財務文書を寄附運用に関する適正・適法性を裏付けるものとして主張しており、財務文書は寄附者である控訴人の利益を間接的に基礎付けるものであって、利益文書に該当する。また、寄附契約と密接に関連する事項を記載している以上、法律関係文書にも該当する。
以上のとおり、財務文書の提出がなければ事実関係の解明は不可能であり、文書提出命令の発令要件も充足する。


