控訴理由書を限定公開
ものみの塔と裁判をしている件。控訴理由書を期間限定公開中。第8弾、寄附者である私の背景に関して述べた第5章。
第5 寄附勧誘の適法性判断における法的評価の誤り
(1)寄附者の最終的な動機を理由とした法的判断の誤り
第一審判決は、控訴人は本件宗教団体が活動できなくなるように行動しているため、被控訴人の寄附勧誘に問題がないと評価している(第一審判決文11頁)。しかし、寄附者の目的の如何を問わず、寄附者の最終意思決定に影響を与えるのは、寄附勧誘の内容であり、これは法的評価の枠組みの誤りである。
控訴人は海外でのエホバの証人が関連した児童性虐待訴訟に関する被控訴人の認知について、寄附前に問い合わせを行ったが、被控訴人は回答を拒否した(乙16・第一審提出分)。そのため、寄附を通じてしか被控訴人の実態にアクセスできない状況にあったことは、控訴人の「やむを得ない事情」として合理的である。
控訴人は、寄附勧誘時の説明と実態が乖離しているかどうか、適法であるか否かを検証するため、寄附を通じて実態を確認しようとしたものであり、これは寄附者保護の観点から合理的かつ公益的な行動と評価されるべきである。
寄附者の目的が確認や調査や公益的関心に基づくものであっても、寄附をするか否かの最終意思決定に影響を与えるのは、被寄附者による寄附勧誘の内容であることに変わりはない。
また、第3で述べたように寄附者の動機や目的を問わず、被控訴人の寄附勧誘には正体隠しや構造的問題、使途の不透明性、説明責任の不履行といった恒常的な問題がある。
第一審判決は、寄附者の主観的動機のみをもって寄附勧誘の適法性を判断しており、不当寄附勧誘防止法の適用に必要な正体隠し、説明責任、寄附の意思決定といった要素を考慮していない。このような判断は、法的評価の枠組みを誤ったものである。
(2)寄附者の意思決定における説明責任の軽視
控訴人は、本件サイトに記載された「宗教活動・人道活動」という説明を信頼して寄附を行ったが、実際には米国の統治体が寄附の使途を掌握しており、その統治体が児童性虐待裁判で多額の賠償責任を負っている事実がある。
このような寄附金の使用主体である統治体の実態が本件サイトに記載されていれば、控訴人は寄附を行わなかった。つまり、被控訴人は、控訴人が寄附をするか否かの適切な判断をすることが困難な状態で本件勧誘行為を行っていたのである。
したがって、第一審判決が本件勧誘行為に何らかの問題があり、それを原因として控訴人が本件寄附を行ったものとは認められないと断定したことは、寄附者の意思決定に不可欠な説明責任を看過した法的評価の誤りである。
(3)訴訟の正当性と公益性に関する法的評価の誤り
控訴人は、少年期にエホバの証人という宗教を強要され、命の危険に晒された経験を持つ宗教的虐待の被害者である。この経験は単なる個人的体験ではなく、当該宗教の制度的問題を問う根拠であり、寄附者保護と運用の透明性を求める本件訴訟の背景である。
本件訴訟は、控訴人が寄附金の使途に対する説明責任と透明性を求め、寄附勧誘の適法性を問うものであり、公益的問題提起としての性質を有する。
被控訴人が控訴人の一連の行動や本件訴訟を「嫌がらせ」と断じたことは(第一審第2準備書面1頁)、宗教的被害者の声を封じるものであり、公益性を有する問題提起を人格攻撃によって否定するものである。
控訴人が当該宗教法人に対して批判的な立場を取っていることは、思想・信条の自由に基づくものであり、本件勧誘行為の違法性の判断とは切り離されるべきである。
被控訴人は、控訴人の「敵意」や「最終目的」をもって訴訟の不当性を主張しているが、これは寄附者保護・説明責任・配慮義務といった法的争点から目を逸らすものである。控訴人の動機がいかなるものであったとしても、控訴人の寄附における意思決定に大きな影響を与えたのは、本件勧誘行為である。
その勧誘内容において、正体隠しや寄附金の使途と説明の乖離、寄附者の意思決定に影響を及ぼす説明責任の放棄といった不適切な実態があれば、それは法的責任を問うに足る。
第一審判決は、控訴人の論理的主張、証拠、社会的背景を十分に評価しておらず、被控訴人の人格的主張に偏重した判断である。
本件控訴は、司法が寄附者の権利と宗教法人の説明責任にどう向き合うかを問う、社会的意義を有するものである。控訴人は、宗教的虐待の被害者として、制度的透明性と寄附者保護を求める公益的問題提起を行っている。これは、個人的な敵意に基づくものではなく、社会的警鐘としての訴訟であり、裁判所がその本質を見誤ることは、司法が公益的問題提起に応答する責務を放棄することに等しく、公益的機能を損なう重大な誤りである。
総括的評価
第一審判決は、控訴人の寄附動機や目的をもって、本件勧誘行為の違法性を否定したが、これは不当寄附勧誘防止法の趣旨と適用要件を誤解した法的評価の誤りである。寄附者の主観的動機がいかなるものであれ、寄附の意思決定に影響を与えるのは、寄附勧誘の内容とその説明状況であり、適法性が判断されるのは使用主体の実態や使途と説明の整合性である。
また、控訴人が宗教的虐待の被害者として制度的問題に関心を持ち、寄附を通じてその実態を検証しようとした行動は、寄附者保護と公益的問題提起の観点から合理的かつ正当なものである。
第一審判決がこのような公益的動機を敵意による攻撃行為で紛争状態の意図的な作出と断定したことは、訴訟の本質を見誤ったものであり、司法の公益的機能を損なう重大な誤りである。
控訴審においては、控訴人の寄附動機や目的を人格的評価に依拠することなく、被控訴人の寄附勧誘の内容と実際の使用主体と使途に照らして、実質的な審理がなされるべきである。


